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その2 第七話 作者冥利に尽きる

Auteur: 彼方
last update Dernière mise à jour: 2025-12-08 16:00:00

16.

第七話 作者冥利に尽きる

「ただいま戻りました」

「チュン、お帰りなさい」

「チュンさんお疲れ様でした」

「お疲れ様でした」

「チュンさーん。使ったエプロン。洗濯乾燥機ちょーど今から回すとこだから洗うなら入れちゃって」

「あ、キタさん。ありがとうございます」

────

 使用した道具を片付けて明日の準備を整えたらちょうどいい時間だ。

「さ、みんなお疲れ様ー。タイムカード押して帰った帰った。ほら、チュンも。何してんのよ」

「あ、所長。あとちょっとだけ。調べたいことがありまして……」

「明日にしなさい。帰ってから家で仕事しようとか思わないことね! アンタはそれでなくてもよく働くんだから、家帰ったら休まなきゃだめよ。分かった?」

「はい」

(とは言え、今やらないと忘れそうです。何かにメモしておきますか……)

 紅中は調べようとしたことをレシートの裏に走り書きでメモした。

『イノウエ順子のマージャン』

「ほらほら、何してんの。帰るんだよ。シロ子も。いつまで包丁研いでるんだい。帰りなさい」

「はいよ。もう終わるから」

「すいません。それでは、私はお先に失礼します。お疲れ様です」

「チュン、お疲れ様」

 シロ子というのは『白田雪子』という家政婦だ。基本的にこの事務所専属の事務員的存在で、稼ぎに出るより新人家政婦に仕事を教える研修係を担当してる事が多い。とくに料理が得意でアズマのキッチン担当責任者とも言える。

(明日、お料理もしてあげたいですね。まあ、得意分野ではないのですが、とは言えできないわけでもありませんし。普段はご主人様がお料理されてるのかしら? 洗濯機さえ回せなかったご主人様がお料理を? あまり考えにくいですね、でも買い物は基本的にご主人様がやっているようでした、あくまで士郎さんは『おつかい』っていう風に行かれましたし。基本的な買い物をご主人様が行い、士郎さんがお料理をやっているとか? あり得る……。出前のゴミは見当たりませんでしたから料理はしてるはず。明日聞いてみますか)

 ――翌日。

「こんにちは。紅中です。本日もよろしくお願いいたします」

『チュンさん。お待ちしてました』

ガチャ

「失礼します。ご主人様、本日もよろしくお願いします」

「いえ、こちらこそ」

(さて、予定通りまずは2階の廊下と階段の清掃を行いましょう)

「宏さんはお部屋でしょうか。今日は2階の廊下掃除から始めますので、少しバタバタしますが大丈夫でしょうかね?」

「平気平気、兄ちゃん多分いまヘッドホンしてるから」

「ヘッドホン?」

「ゲーム中だからさ。廊下でバタバタしても気付かないよ」

「それは好都合ですね。では、仕事を始めます。あ、これ4巻です。どうぞ」

「やったー。お父さん。僕から先に読んでいい?」

「まあ、いいけど早くな」

「ありがとう!」

(ふふ、自分の漫画が取り合いになるなんて作者冥利に尽きますね)

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